WWDC26でメインテーマになるであろうAI関連。The Informationが、Appleにおける現在のAI開発の状況を伝えています。「Apple Intelligence」はAppleが提供するAIではあるのですが、実態を見ると、「Appleが作ったAI」とは言い切れないほど、外部要素を必要としていることが明らかになりました。

まず全体像:AIは3層構造で動いている
AppleのAI処理は、現時点で以下の3層に分かれています。どこでどの処理が走るかを先に把握しておくと、以降の話が整理しやすくなります。
STRUCTURE — ソース:① via 9to5Mac / The Information(Aaron Tilley, 2026年5月28日)
- Layer 1(iPhone本体):Geminiから蒸留した小型モデルを内蔵。軽いタスクはここで完結する。Apple Intelligenceが「オンデバイス重視」と訴えるのはこの層のこと
- Layer 2(Private Cloud Compute):Appleが自社運用するサーバー。ユーザーデータはここで保護され、Googleには渡らない
- Layer 3(Google Cloud + Nvidia):Layer 2で処理しきれないクエリが流れる先。フルGeminiモデルをGoogle Cloud上のNvidiaチップで実行する。今回の報道で新たに判明した層

Gemini「蒸留」とは何か
「Layer 1のオンデバイスAIがどこから来ているか」という話です。
Appleは、GoogleのフルGeminiモデルにアクセスし、そこからデバイス上で動ける小型モデルを生成する「蒸留(distillation)」を行っています(The Information報道)。大きなモデルの「答えと推論過程」を小さなモデルに学習させる手法で、単に答えだけを模倣させるより精度が高いとされています。
「オンデバイスAI強化」というAppleのメッセージは、実態としてはGeminiを原材料にして小型モデルを育てている、ということになります。
なぜNvidiaが必要になったのか(今回の新情報)
フルGeminiモデルは「兆単位のパラメータ」を持つ巨大モデルで、AppleのPrivate Cloud Computeサーバーでは処理しきれないことが判明しました。
そこでAppleが取った解決策が、Google CloudのNvidiaチップ(コンフィデンシャルコンピュート)の使用承認(The Information、5月28日報道)。「プライバシー重視のApple」がGoogleのクラウドインフラ上のNvidiaチップに処理を委ねることを、正式に承認したということになります。これは初めての動き。
NOTE — Apple一次情報ではない
- 「コンフィデンシャルコンピュート」は、クラウド処理中のデータを暗号化・保護する技術。Appleのプライバシー基準を形式上は満たす
- ただし、ユーザーデータがAppleのサーバーの外に出るという事実は変わらない
- GoogleはAppleとのパートナーシップについて「Appleのユーザーデータは受け取らない」と公式に述べている
Liquid AI買収の検討(追記)
同じ報道の中で、Appleがオンデバイス特化のAIスタートアップ「Liquid AI」(マサチューセッツ州ケンブリッジ)の買収を検討していると伝えられています。内製化・オンデバイス強化の方向を引き続き進めたいというAppleの意図を示しています。
💬 軽めインプレ所感
以前、「Apple Intelligenceの現在地と諸懸念を正直に書いてみた」という記事で、AppleがPrivate Cloud Computeを通じて「データはAppleを含む誰もアクセスできない」設計であることを書きましたが、その前提が変わってしまいましたね。
フルGeminiはAppleのサーバーでは動かせなかった。だからGoogle CloudのNvidiaチップに処理を委ねることを承認した——これが今回の核心部分。コンフィデンシャルコンピュートでプライバシーは形式上担保されているとしても、「Appleのインフラの外に出ない」という当初のイメージとは、やはり距離があります。
とはいえ、これが「悪いこと」かというとそうでもなくて、フルGeminiを動かせるインフラを自社で持つより、既存のGoogle Cloudを使う方が現実的で、結果として使えるAIが早く届くなら、ユーザーにとっては嬉しい。Liquid AIの買収検討は「いずれ内製に戻したい」という思いの表れかも?WWDC 2026でAppleがこの構造をどう説明するか。
僕の用途としては、GeminiよりもClaudeの方が使いやすいので、選べるようになって欲しいなとも思います。ただ、Claudeが選べるとしても、これまでのskill.md,claude.mdの蓄積が使えないのであれば、別に使わないかもなー。気になるのは、Appleの今後のAI実装計画にMCPやスキルなどが入るのかどうかですね。多分、そこまではやらないというのが僕の見立て。外れる方が嬉しいですけど。






