TSMCによる米国への1,000億ドル投資:Kuo氏「短期的な懸念はあるものの、長期的にはTSMCにとってプラス材料」
とはいえ、日本にも間接的な影響あり。
トランプ関税への対応として、TSMCは1,000億ドルの投資を行うことを表明。
これがTSMCの利益率が下がることや業績悪化につながるのではという見方も出ていますが、Ming-Chi Kuo氏の分析では、その可能性は小さいとしています。
In-Depth Analysis of TSMC's New Investment Plans in the United States: TSMC stands out as the most successful non-US company in negotiations with the Trump administration
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— 郭明錤 (Ming-Chi Kuo) (@mingchikuo) March 4, 2025
この1,000億ドルディールは、双方にとって有利な交渉であり、TSMCは株主価値を最大化するために政府の要求と商業的利益のバランスをとったとしています。
TSMCの投資は、地政学的リスク、関税リスク、独占禁止法リスクを大幅に軽減し、株主価値を最大化するもの。
米台間の協力強化。TSMCの計画によると、米国の先端ノード工場がすべて完成したとしても、同社の世界生産能力の約5~7%を占めるに過ぎない。米国の顧客は今後何年もTSMCの台湾拠点の生産能力に大きく依存することになり、米国工場の稼働は台湾の技術チームからの多大な遠隔サポートに依存することになる。
2.
粗利益への影響と新たな受益者。米国工場の平均粗利益率は約30~35%である。これらの工場がフル稼働すれば、TSMC全体の粗利益率は1.5~2%低下する見込み。これを相殺するため、TSMCはサプライチェーンを圧迫して価格引き下げを図るだろう。これは、既存のサプライヤーにとって課題となる一方で、新規サプライヤーにとってのチャンスを広げ、潜在的な投資機会を生み出すことになる。
3.
投資額に関する懸念は誇張されている。投資家は1,000億ドルの投資が収益性に与える影響を懸念するかもしれないが、そのような懸念は誇張されている。前述の柔軟な支出調整に加え、私の理解ではTSMCは海外投資を一定の割合でコントロールしている。これは、今後ドイツと日本への投資を削減することを意味する可能性が高い。さらに、米国に新たな先端パッケージング工場を建設することで、TSMCはInnoluxの工場を購入する必要がなくなるかもしれない。
4.
R&Dセンターのメリット。米国のR&Dセンターには、2つの重要なメリットがあります。1) Intel、IBM、そして上流企業の優秀な人材の活用、2) 米国の材料サプライヤーとの緊密な連携(TSMCが現在、N2やN16の歩留まりよりも大きな課題に直面している分野)です。
これらの点を挙げ、短期的な懸念はあるものの、長期的にはTSMCにとってプラス材料だ、と説明しています。
ここで見られる日本への影響としては、3)の「今後ドイツと日本への投資を削減することを意味する可能性が高い」という部分ですね。
政府が、日本の半導体産業の競争力を高める目的で巨額の補助金を投資しているというプロジェクトですが、TSMC自体の投資開発戦略が変わると頓挫するかもしれませんね。ジャパンディスプレイ(JDI)とか、JOLED(ジェイオーレッド)とか、エルピーダメモリのようにならないといいけど。